戦後最後の花婿移民奮戦記

日本に生まれ、異国の地に渡り住んだ私のつたない思いをつづります。

雲のように生きたい…

2017年09月12日 火曜日 移民…

移民は、移り住んだ人。
でもね、
どこに移り住んだんのか
どれくらいの期間、移り住んでいるのかで
その苦労も違う。


自国を離れ、
どこかに住んでいる人のことを単に移民とは言わない。


もし、自国を離れた人を移民というのなら、
帰国子女も移民?


そんな疑問がよぎる。


本当はね、
自国を離れ
異国の地で、大地をしっかりと足で踏みしめ、
必死に生きる人


それが、「移民」だよ。


だから、移民の苦労をわかった気になる人は多いけど
本当の移民の苦労は
移民しかわからないのさ。


誰が、
電気のないところで暮らしたことがある?
誰が、
舗装していないところを
トラクタにトレーラーを付けて、
そこに乗って、農作業が終わってから近くの友達のうちまで行ったことがある?
誰が、
井戸水で暮らしたことある?
電気がないんだよ、ポンプなんて使えないよ。
桶を縄に付けて、深い井戸水をくみ上げて、
それを家まで、持って行って、顔を洗って、体を洗って…
その井戸が、家のそばにあればいいよ。
ふつう、ちょっと離れてる。
だって、肥溜めと30mは離さないと、くそみそ一緒になっちゃうでしょ。
そんな常識も知らない人が多い。
トイレって言ったって、
ポットン便所だよ。
穴をほっただけ。だから、地下水に流れちゃうでしょ。
穴がいっぱいになったら、ちょっと移動するんだ。
トイレは、比較的、家に近いところに作るんだ。
そうしないと、我慢できないでしょ。
井戸水は、逆に遠くに作るんだよ。


誰が、
隙間風の入る家に住んだことある?
誰が、
雨漏りのする家に住んだことある?
誰が、
冷蔵庫のない生活をしたことがある?
誰が、
テレビや電話のない生活をしたことがある?
昔は、ラジオを聴いていた。
ラジオといったって、乾電池のラジオだよ。
洗濯だって、手で洗濯するんだ。
下着やシャツはいいけど、ジーンズなんて、手洗いするのは大変だよ。
汚れた食器はね、砂でこすって汚れを落としたんだ。
小川が流れてたら
そこで洗ったりしたもんだ。


原始林を切り倒して…
それから始まる生活は、並大抵なことじゃない。
お産ったって、産婆さんがいるだけ。
だれが、病院までいくんだ?
病院ってったって、遠いし、トラクタで行かなきゃ。
雨が降ってたら、濡れちゃうし。
往診なんてしてくれる医者がいたとしても、
そりゃ、大変だよ。
悪路を何キロって馬で歩いていったり、
車を持っている人はほとんどいなかったんだ。


並大抵じゃないことをしてきたのが、
「移民」なんだ。


その「移民」は、
地面がノートだった。
日々の生活が、勉強だった。
自然に節約をすることを学んだ。
あの江戸時代のリサイクルを自然としていたように…


大消費時代はね、
もともと作られたものなんだ。
しかるべくして、築き上げられたんだ。
社会科を勉強すれば、わかるよ。


昔は、消費することを拒んだ。
消費することは、破産につながるから。
できる限り節約したんだ。


贅沢は敵。


そんな言葉より、もともと、贅沢なんて考えられなかったんだ。


移民というは、


贅沢を考えることもなく、
豊かな食事をすることもなく、


ただ、ひたすらに自分の人生を生き抜いてきた人たちなんだ。


だから、移民の苦労なんて…
いまの人たちには
誰にもわからない。


移民…
移民のことを本で読んだって
移民のことを勉強したって…


移民の心も苦労も体験してみなければ、
だれにもわからない。


だから、移民ってなに?
って言われても、
返事に困るし
体験しなかったら、その苦労は伝わらないと思う。


それが、移民だと思う。


筆者の妻は、ずっと、電気のない暮らしをしてきた。
木造の家を引っ越しするとき、
トラクタのトレーラーに乗っけて、
家ごと引っ越しをした。
移動するのには馬かトラクタ。
床なんてない。
土間だ。
ガスなんてない。
薪でご飯を作った。
近くに店…
そんなものは、なかった。


移民の苦労は、
そんなに昔の話じゃない。


しかも、筆者の妻は、移民ではない。
その土地で苦労した移民の孫だ。


昔は…
苦労は買ってでもしないさいとよく言ったものだ。
いま、そんなことを言えば、
体罰になりかねない。


昔は…
苦労話でいっぱいだった。


今は…
いじめの話でいっぱいだ。


時代は変わった。


移民の苦労なんて
本で読めばいい。
それで十分。


でも、知識として覚えた移民の苦労と
移民がしてきた苦労の差は大きいことだけは
紛れもない事実である。


そう、思った。

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